■コマ大数学科198講:和と積
芥川龍之介は『文芸家たらんとする諸君に与ふ』という小文で、中学生に対して、数学と体育を学ぶ必要性を説いた(とマス北野は説いた)。数学と体育とくれば、コマ大数学研究会^^; コマ大、ファイ、ファイ、ファイ!「たけしのコマ大数学科」
問題:足しても掛けても同じ数になる5つの正の整数と、その数を答えなさい。
青い丸内の数字をクリックして、キーボードで数字を入力する。同じ数字を用いるので、上段、下段のどちらかの数字を変えると、もういっぽうも変わる。和と積の答えを一致させてほしい。
それぞれ異なる数にするのは、最小でも「1,2,3,4,5」となり、ご覧のように和と積の答えを一致させるのは不可能。当然ながら、同じ数字をいくつ使ってもよい。また、正の整数は、0より大きい整数のことで、0は含まれないからね^^;
コマ大数学研究会は、特製のシーソーを使って検証。両端に数字を書き込める箱があり、和と積を比べ、大きい数のほうの台座を外すと、箱の中身が顔の上に落ちるという仕組み。箱の中身は、熱湯、ザリガニ、イガ栗、イカスミ……と、身体を張ったリアクション大会となった^^;
●コマ大数学研究会の答え「1,1,1,2,5」(10)
対戦開始早々、中村センセから「同じ数字が入ってもかまわない」と告げられると、木村美紀&山田茜さんの東大生チームは秒殺で「できちゃった」発言。すると、マス北野は「あ、ふたつできた」と応酬。勝負は、答えを何個見つけられるかになった。
●マス北野&ポヌさんの答え
「1,1,1,2,5」(10)
「1,1,2,2,2」(8)
「1,1,1,3,3」(9)
1+1+1+1+1=5、1×1×1×1×1=1になるので、計算とゆーより、小さな数を適当にあてはめて、答えを見つけたようだ。
●木村美紀&山田茜さんの答え
「1,1,1,2,5」(10)
「1,1,1,3,3」(9)
「1,1,2,2,2」(8)
東大生チームも、大きい数ほど、和より積の方が大きくなるので、なるべく小さい数の組み合わせを探した。
5つの数字を「1,1,1,2,x」とした場合、和は「5+x」、積は「2x」、これが等しくなるので、「5+x=2x」となり、「x=5」が求まる。
同様に「1,1,1,3,x」とした場合は、「6+x=3x」となり、「x=3」
「1,1,2,2,x」とおくと、「6+x=4x」→「x=2」
……というわけで、3パターンの答えを見つけた。
どのチームもに正解だが、式を立てて論理的に解いたということで、東大生チームがコマ大フィールズ賞を獲得した。
●中村亨センセの「美しき数学の時間」
中村センセとしては、マス北野チームも、東大生チームも答えを3つ見つけたが、はたして、4つめの答えがあるのか、ないのか、そのへんも含めて、答えてくれれば、ベストだったようだ。
このような問題に出会ったら、5つの数を小さい順に、a≦b≦c≦d≦eと並べてしまうのが定石の考え方らしい。
和と積が等しいので、abcde=a+b+c+d+e≦5e
両辺から「e」を消しちゃうと、
abcd≦5 ……(1)式
…となって、これだけで、かなり絞り込むことができる。
・もし、b≧2とすると、d≧c≧b≧2なので、bcd≧8、よって、abcd≧8となって、(1)式に反する。つまり、b=1が求まる。
・a≦bなので、a=1
・(1)式より、cd≦5なので、c≦2
※註:a≦b≦c≦dという条件から、c=3のときは、3≦dで、cd≧9になってしまふ。
ここまでにわかったこと。a=1、b=1、c≦2
ここからは、c=2、c=1のときの場合分けを行う。
・c=2のとき、
(1)式、abcd≦5より、2d≦5、2≦d≦(5/2)、2≦d≦2.5、dは整数なので、d=2が求まる。
ここまでにわかったa,b,c,dの値を代入すると、
a+b+c+d+e=abcde → 1+1+2+2+e=1*1*2*2*e → 6+e=4e
∴e=2
答え{1,1,2,2,2}
・c=1のとき、
a+b+c+d+e=abcde → 1+1+1+d+e=1*1*1*d*e → 3+d+e=de
de-d-e=3
de-d-e+1=4
(d-1)(e-1)=4
(de-1)=1,(e-1)=4のとき、d=2,e=5
答え{1,1,1,2,5}
(d-1)=2,(e-1)=2のとき、d=3,e=3
答え{1,1,1,3,3}
中村センセの解説に、曖昧なところは、微塵もなく、「数学」の論理力って偉大だなぁ……と、爺は、えらく感心してしまった。ポイントは、有無を言わせず、「a≦b≦c≦d≦e」と、数字の並び順をはじめに、規定しちゃったところね。
これが可能なのは、足し算と掛け算に関しては、計算する際に、どこから計算しても、順番を入れ換えてもよいという「結合法則」と「交換法則」が成り立っているからだ。
「結合法則」や「交換法則」という言葉を知らなくても、たとえば、次のような足し算をするとき、私たちは計算を簡単にするため、頭の中で計算する順序を変えていないだろうか。
7+3+18+2+9
=(7+3)+(18+2)+9
=10+20+9
=39
で、中村センセの「ちょっといい話」は、「トロピカルな和と積」の話。「トロピカル幾何学(Tropical geometry)」という言葉は、ブラジルの科学者、数学者である、イムレ・シモン(1943~2009)が唱えたらしい。
上のように、トロピカルな和とトロピカルな積を定義。すると、結合法則や交換法則、分配法則が成り立つというのだ。
これを使うと、「1+0x+2x^2」のような多項式も考えることができるという。いろいろな応用があり、ここ10年くらい、この新たなアプローチの数学がちょっとしたブームになっているらしい。他の演算子はどーなっているんだろう……と調べてみたら、大きい方をとる「Max-plus 代数」と、小さい方をとる「Min-plus 代数」があることがわかった。
数学って、ときどきヘンな記号が表れて、数学落ちこぼれの爺には意味不明で、いったいなんのこっちゃという感じのことがある。上の図で一般的な代数の「引き算」は、min-plus代数では「割り算」っぽいのだが、初めて見る記号だ。「LaTex」でも表示することができず、作図してしまった^^;
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※たけしのコマ大数学科の「過去問題」はこちらから。
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コメント
トロピカルな積についてですが、記号が表示できないので、「*」で代用します。
2 * 5 = 7 はわかります。ですが、
(1 * 2) * 5 = 7 ではなくて、
(1 * 2) * 5 = 8
じゃないでしょうか?
1 * 2 = 3ですよね?
投稿: take | 2010年9月25日 (土) 00時38分
takeさま、間違いの指摘ありがとうございます。
ひえ~、やっぱり、間違っていたか;; ぜったい、どっかで、ミスしているんじゃないかと思っていたんですよね……(だったら、ちゃんとチェックしろよ>爺;;)
ごめんなさい。記事の図版を修正しておきました。
投稿: Gascon | 2010年9月25日 (土) 01時26分
トロピカルな積の交換法則のところも、
1*2=3 2*1=3 (ふつうの足し算)
じゃないでしょうか。
投稿: pom | 2010年9月27日 (月) 11時19分
pomさま、間違いの指摘ありがとうございます。
いかに、爺が混乱していたかの証ですね><;
図版を再度、修正しました。
投稿: Gascon | 2010年9月27日 (月) 12時26分
たけしのコマ大数学科および一関市博物館の和算に挑戦(今年もまた応募時期が来ました)を愛する高校数学講師です。
今日初めてこのようなブログに辿り着きました。
仲間たちにも伝えようと思います。
投稿: 算法少女 | 2010年12月 1日 (水) 21時10分
些細なものですが、「c=1のとき」の下の(de-1)は正しくは(d-1)ですね。
投稿: 三船 | 2015年12月10日 (木) 23時10分
三船さま、ありがとうございます。
だいぶ前のことなので、すっかり忘れてしまいました。ご指摘のように直しましたが、これで大丈夫でしょうか?
投稿: Gascon | 2015年12月12日 (土) 04時23分