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2010年8月29日 (日)

■コマ大数学科194講:和算Part4

息子から「電子たばこ」をプレゼントされたが、いまだに「たばこ特別税」で旧国鉄の負債を払い続けている爺……「たけしのコマ大数学科」

問題:半径がRの円Oに弦ADをとり、円Oの円周上にA,B,N,C,Dをこの順にとる(Nは弧ADの中点)。さらに弦ADの中点Mに対して、線分MB,MCによって、この円弧を3等分し、それぞれの部分に半径rの3つの内接円を作る。AD=10,MN=4としたときのrを求めなさい。

C194_01

という問題なのだが、どーやら問題文に間違いがあるようだ><;

爺は、Flashのスクリプトを使い、問題図を作成した。弧ADを三等分すると、真ん中の小さな円が苦しいのが、わかってもらえると思う。等しい直径の円が3つ入らないのだ;;

図(2)

もちろん、∠AMD(180度)を三等分して、60度ずつ分割するのも間違いだ。爺の「いいちこ」な塩梅による計算だと、∠AMBは、弧度で「0.981765356578622」、角度に直すと「56.2510114041114」となった^^;

図(3)

問題文の「弧ADを三等分」というのは、間違いだが、今回の問題を幾何的に解く場合、具体的な角度は、必ずしも重要ではない。大円の弦ADをどこにとるかで、この角度は違ってくる。重要なのは、大円を切り取る弦と弧の内側に等しい直径(半径)の小円が3つ収まる状態のとき、小円の半径を求めること。

前置きが長くなってしまったけれど、コマ大数学研究会は、最初から神だのみ。「アクアシティお台場神社」にお参りしたあと、しめ縄を使い、地面に描かれた大きな問題図で検証。

コマ大数学研究会の答え「1.35」

マス北野は、いつものように、コンパスと定規で、できるだけ正確な図を描いていく。どうやら、コンパスで測ると1.5くらいになるという目星をつけたが、補助線を何本引いても、うまい解法が見つからないままタイムアウト。

マス北野&ポヌさんの答え「1.ζ」
※1.3とも、1.5とも読めるような答えを書いた^^;

小橋りささん&岡本麻希さんの東大生チームは、直角三角形の相似比と三平方の定理を使い、なんとか小円の半径を求めようとゴリゴリ計算したが、あらかじめ立てた戦略の筋書き通りに行かず、答えが出せない。

小橋りささん&岡本麻希さんの答え「1.5くらい?」
※数学の問題の答えに「くらい」、しかも「?」までついているので、みんなから非難轟々^^;

正解:小円の半径は「10/7」。小数に表すと、約1.42857……どのチームも、自分のチームの答えが近いと、騒然となったが、今回は、コマ大フィールズ賞はなし。

竹内薫センセの「美しき数学の時間」

図(4)

戦略としては、直角三角形「O1MI」と「O2EH」が相似であることを証明し、相似比を使い、小円の半径「r」を求める。

今回の問題はややこしいので、ひとつひとつステップを踏んでいこう。まず、相似であることの証明。Eは、∠HO2Mを二等分する、線分BM上にとった点である。∠AMNは直角。∠O1IM、∠O2HMも直角。三角形の内角の和は180度なので、∠BMN(図の青い点)を直角から取り除いた角度を二等分した角度が、∠O1MI、∠HO2Eになる。ゆえに、∠O1MIと∠EO2Hは等しい。直角三角形「O1MI」と「O2EH」はすべての角が等しいので、相似形である。

すると、相似比で「r:IM=HE:r」が成り立つ(rは、小円の半径)。

・大円の半径
図(5)

図(6)

まず、Oを中心とした大円の半径を求めておく。三平方の定理を使えば、R=(41/8)と求まる。

・IMの長さ
図(6)

IMの長さは、O1Jの長さと等しい。O1Jの長さを求めれば、IMの長さになる。JOの長さは、小円O1の半径(r)とMOの長さを足したもの。O1Oの長さは、大円の半径(R)から小円の半径(r)を引いたものだ。三平方の定理で、IMの長さを求めることができる。

図(8)

・HEの長さ
図(9)

Hは、小円O2と接線BMの接点。∠O2HMは直角。O2Hは小円の半径(r)、O2Mは(4-r)なので、HMの長さは三平方の定理で求まる。で、HEの長さは、角の二等分線の公式(HE:EM=r:4-r)を使い、計算する。

図(10)

・小円の半径(r)を求める
図(11)

さあ、これで計算に必要なものは揃った。ふたつの直角三角形の相似比を使い、小円の半径(r)を求める。

図(12)

番組内では、細かな計算過程は省略されたが、とにかく爺は、Maximaのおかげで、なんとか小円の半径を求めることができた。しかし、たった10分間でこれを手計算しろというほうが酷という気もする。

もっと、簡単な解法はないのだろうか……。というわけで、今回のテーマ「和算」の話になる。

図(13)
※引用:「続算学小筌」(1832年:牛島盛庸(うしじま・もりつね))

おせっかいを承知で「いいちこ」な爺が、わかりやすい現代的な表現にしてみた^^;

図のように斜めに隔てた(区切った)弧の内に、3つの等しい直径の小円を容れる。弦の長さは「四寸」、矢の長さは「一寸」のとき、等しい小円の直径を答えよ。
答え、等しい小円の直径は「八分」。
解法は、弦と矢を乗算した値を、弦と矢を足した値で除算する。これで等しい小円の直径を得ることができる。

(※どこにも、円弧を三等分するなんて書いてない)

つまり、弦(4)×矢(1)÷(弦(4)+矢(1))=4÷5=0.8
円の直径は「8分」となる。

今回の問題に適用すると、弦(AD=10)、矢(MN=4)なので、(10×4)÷(10+4)=40/14=20/7 これは、直径なので、半径はその半分、10/7となる。「続算学小筌」の問題と、今回の問題とは、弦AD、矢MNの長さも違うのに、この解法で答えを求めることができるということは、天保3年に書かれた「続算学小筌」の正しさを現在の数学で証明したことになる^^;

しかし、天保3年の江戸時代の人が、どのような解法で、この答えにたどり着いたのだろうか(江戸時代には、Maximaやパソコンなんてものはなかっただろうし^^;)。

番組内で竹内センセは、「2ab/(a+b)」というのは、調和平均を求める公式なので、もっと簡単な解法があるかもしれないと言っていた。

そのヒントとなるのが、「算法新書」(1830年:千葉胤秀(ちば・たねひで))だ。

図(14)
※引用:「算法新書」(1830年:千葉胤秀(ちば・たねひで))

「半梯」というのは、等脚台形を垂直に二等分した台形のことのようだ。直角がふたつある。

図(15)

「算法新書」には、このような図解が載っているのだが、問題の寸法と図の寸法がかけ離れているし、わかりにくいので、説明用のFlashを作成した。


※Playボタンを押してほしい。

「半梯」の下底をa、上底をbとすると、円の直径は、「2ab/(a+b)」という式で求められることがわかった。

このヒントを今回の問題に適用してみる。

図(17)

Dを通る垂直線を引く。Nを通り、ADに平行な線分を引く。その交点をEとする。AとEを結ぶ線を引く。ふたつの小円に接するような、ADに平行な線を引く。AEとの交点をF、EDとのこの交点をGとする。また、FからADに垂線を引き、交点をHとする。「算法新書」では、FGとFHは、円の半径だったので、FG=FH、この問題の場合は、FGとFHは、ともに円の直径、つまり、□FGDHは、正方形。△EFGと△EADは相似。ここまでくれば、「算法新書」の方法で、円の直径を求めることができる。「算法新書」と違うところは、円の半径ではなく直径だというところ。だから、倍することなく、「ab/(a+b)」という「続算学小筌」の答えになる。

図(18)

コマ大数学科の問題は、小円の半径を求めることなので、2で割る。

ところで、今回のちょっといい話は、いろいろな「平均」の話だった。

図(19)

ふつー「平均」と言ったら、足して2で割るよね。これを「相加平均」または「算術平均(Arithmetic mean)」と言う。企業(売上)の成長率などの平均は、「相乗平均」で予測することができる。「相乗平均」は「幾何平均(Geometric mean)」とも言う。で、「調和平均(Harmonic mean)」は、ハーモニックとあるように、ピタゴラス音階と関係がある。株式証券をできるだけ安く購入する方法として「ドル・コスト法」があるが、これにも「調和平均」が関係している。まぁ、世の中、いろんな平均に満ちているわけだが^^;

今回、爺がすごく驚いたのは、「円」と「平均」の関係だ。「円」と言っても「お金」のことではない^^; ミステリーな「円」だ。「和算」というと、どこか、門外不出の秘術めいていて、その解法について触れていないことがあるけれど、江戸時代後期になると、いろいろな公式集みたいなものも、出回っていたみたい。「和算」の問題には、「円」の性質を使ったものが多いように、爺は感じる。それほど「円」は、ミステリーなのら^^;


上のFlashは、円の直径を「10」としたとき、直径上の任意の点を「G」とする。AG=a、BG=bなので、(a+b)/2=半径となる。あたりまえちゃ、あたりまえだけど、これが「相加平均」。いわゆるふつーの「平均」だ。「G」を通る垂線を引き、円弧との交点を「P」とすると、PGは「相乗平均」になる。さらに、「P」と円の中心「O」を結び、「G」から線分「PO」に対して垂線を引き、交点を「H」とする。この「PH」が「a」と「b」の「調和平均」になるのだ。

そんなうまい話が……というわけで、疑がり深い爺は、それぞれの「平均の公式」で計算した結果と、Flashの「Point」という機能を使い、それぞれの点の距離を求めて検証した^^;

近似値計算の誤差が表れることがあるけれど、どーやらホントみたいだ。

それにしても、「和算」に目覚めた、江戸時代の人は、こーいった「円」や「直角三角形」の持つ性質の不思議さに気付いていたんだろうな……。

酔っ払い爺の妄想だが、もし、爺が「創世記」を書くならば、「神は、はじめに真円を描いた。『ま、そーゆーことだから、あとは、よろしくね!』と神は言い残し、どこかに去ってしまった……」と書くかも^^;

≪参考≫
東北大学 和算資料データベース

・「続算学小筌」の該当頁

・「算法新書」の該当頁

※追記(補足)2010年9月17日

ちょっと言葉足らずで、わかりずらい部分もあったと思うので、もう少し説明を補足する。

今回の問題は、問題図から答えを出そうとすると、なかなか埒があかない。そこで「算法新書」のヒントを得て、上底(4㎝)と下底(10㎝)の端が左右どちらかに揃っている台形に半径(2r)の円が内接するとき、この台形の高さを求めれば、結果的に小円の直径(2r)も求まると爺は考えた。補助線というより、問題をすり替えちゃうのね^^;

図(20)
「算法新書」では、今回の問題の矢の長さ(NM)が台形の上底(KI:4cm)と等しいことを証明している(※説明用Flash参照)。NM=ED=4。この台形に円が内接していると考えると、FHとFGは、ともに内接円の半径なので、FH=FGとなる。FHは小円の直径。つまり、この台形の高さ=内接円の直径は、小円の直径の2倍になる。

「算法新書」の解法(※爺の推測による、勝手な解釈を含む)
△ADEと△EFGは相似形なので、EG:ED=FG:ADが成り立つ。

図(21)
「算法新書」では、小円の直径=(上底×下底)÷(上底+下底)という、答えを導き出したが、「続算学小筌」でも、同じように考えたのではないかと、爺は勝手な妄想を膨らましている^^;

それでは、「算法新書」とは、別の方法で、台形の高さ(小円の半径の4倍)を求めてみよう。

図(22)
円が内接している台形の持つ「上底+下底=斜辺+斜辺」となる性質を使う。台形の4つの頂点と内接円の中心を結ぶ。各辺の円の接点と内接円の中心を結ぶ。すると、三角形が8個できるが、各色どうしの三角形は合同(※今回の問題では、黄色と緑も合同)。つまり、上底と下底、それに2つの斜辺は、同じ長さの辺を持つ三角形の組み合わせで出来ているのね。

図(23)
……というわけで、同じく「r=(10/7)」という答えを求めることができた。でも、やっぱり「続算学小筌」&「算法新書」の「調和平均になる」という解法のほうが、日本的(?)で、美しい感じがする^^;

それにしても、なぜ、番組では、テーマが「和算」なのに、和算の解法のほうを紹介しなかったのだろうか? もしかして、「和算」に興味を持ってもらうため、あえて「謎」としたのかな。番組では解説の時間が限られているから、ヒントを出すにとどめ、あとは自分で考えてね……ということかな。「謎」を提示されると、気になるよね。竹内センセの策略に、爺がみごとにハマってしまった……とゆーこと??

※たけしのコマ大数学科の「過去問題」はこちらから。
コマ大数学科:2009年度全講義リスト
コマ大数学科:2008年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト

コマ大数学科DVD-BOXガイド


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コメント

コマ大数学科194講:和算Part4

∠AMB=∠CMD=56.25°
∠BMC=67.5°のとき
弧ABと弧BCの長さはどうなるのでしょうか?
お教え願えないでしょうか

今、タイで単身暮らし
いつも楽しみに解いていますが

投稿: 竹綱 久次 | 2010年8月31日 (火) 19時06分

竹綱さま、コメントありがとうございます。

図の大円Oの直径と円周の交点(左側)を便宜的にRとすると、RAの弧度は、atan((9/8)/5)で簡単に求めることができます。ABの弧度は、大円の中心OとMが離れているため、ちゃんと計算しようとすると、面倒なので、ポイントBの座標から大円Oのラジアン(弧度)を計算してみました^^;

RA = 0.221314442347791
AB = 0.885778745451305
BC = 0.9274062779916

2*RA+2*AB+BC=π

実際の弧の長さは、これに大円の直径10を掛けたものになります。

投稿: Gascon | 2010年8月31日 (火) 23時34分

Gasconさん、いつも参考にさせて頂いております。わからないのがFGがなぜ2rになるのかです。結果的に2rになるのはわかりますが。

投稿: たま | 2010年9月13日 (月) 04時08分

「たま」さま、コメントありがとうございます。

AEの傾きは、4/10=2/5ですよね。
Aをxy座標の原点(0,0)とすると、y=(2/5)xという式になります。

y=FH=20/7
20/7=(2/5)x
x=AH=50/7
FG=DH=AD-AH
FG=10-(50/7)=20/7
∴FH=FG

投稿: Gascon | 2010年9月13日 (月) 18時46分

私の計算では異なる結果になりました。
大円の直径は 10 ではありませんよ。

RA = 0.221314442347791
AB = 0.882706453270613
BC = 0.933550862352984

2*RA + 2*AB + BC = π

実際の弧の長さは、これに大円の半径 (41/8) を掛けたものになります。

投稿: かずま | 2010年9月14日 (火) 02時17分

先に竹内薫センセの解法でrを求めておくということですね。

投稿: たま | 2010年9月14日 (火) 05時56分

「かずま」さま、間違いの指摘、ありがとうございます。

大円の直径を10と書いてしまったのは、あきらかに私のミスです。弧の長さの計算も、爺より「かずま」さんのほうが信用できると思います。もう、検算する気も失せました;;

「たま」さまへ

的はずれな爺のコメントで申し訳ないです。結果的にFH=FGになることは、「たま」さんにもわかっていらっしゃったわけですよね。

番組では「続算学小筌」の解法が紹介されましたが、なぜ、そうなるのかはわからないということでした。ヒントとして「算法新書」があげられていました。

「算法新書」の問題は、台形(半梯)に内接する円の直径を求めるものでしたが、爺は、その最終的な解法図をそのまま、今回の問題にあてはめてみると、ピタリと重なるということを書きたかっただけです。

「たま」さんが聞きたかったことは、「なぜ『算法新書』の解法をあてはめることができるのか?」ということではないかと思います。

「なぜあてはまるのか」あるいは、「本当にあてはめて考えていいのか」、爺にもわかりません。それは数学的に証明しろということですから……。

投稿: Gascon | 2010年9月14日 (火) 10時37分

FH=FGとなることが証明できれば今回の問題は『算法新書』の解法で解けるということですよね。

投稿: たま | 2010年9月14日 (火) 15時19分

「たま」さまへ。

なぜ「FH=FG」になるのか。できるだけ、わかりやすくということを念頭において、記事に追記しました。

投稿: Gascon | 2010年9月17日 (金) 17時48分

やはり私には「算法新書」やGasconさんの新たな解法をそのまま適用することはできないように思われます。なぜなら台形ADIKの内接円の中心が点Fに一致している保障がないからです。これを保障するにはFH=FGとなることを別に示せば十分だと思います。実際に示せるかどうかはわかりません。

投稿: たま | 2010年9月19日 (日) 13時32分

「たま」さまへ。

もし、FH=FGを証明しろということなら、ちょっとめんどうですが、竹内センセの方法で小円の直径を求めればいいんじゃないんですか。先のコメントでも書いたように、結果的にFH=FGを求めることができます。つまり、「続算学小筌」&「算法新書」の解法の正しさが、別の方法で証明されたわけですから、次に同様の問題が出たとき、(江戸時代の人の智を踏まえ)もっと簡単な方法で求めることができるよ……ということで、爺なんぞは、納得してしまうのですが^^;

投稿: Gascon | 2010年9月20日 (月) 16時52分

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