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2007年12月12日 (水)

■書籍「算数の発想」

 なにやら、あやしげな実験装置がある。装置の両端には電極があり、電池につながれている。箱の中は絶縁体で満たされており、ここに伝導体である小さな正方形の金属片をばらまいていく。箱全体にまんべんなく金属片が敷き詰められた場合を「1」とすると、どれ位の割合で金属片があると電気が流れるか、その確率を求めよ。

≪参考≫
算数の発想」/ 小島寛之

 金属片の数が少ないと、当然ながら電気は流れない。しかし、ランダムに投入する金属片の数を増やしていくと(プログラムでは、同じ場所に落ちた金属片はカウントしない)、ある数に達したとき、電気が流れる。電気が流れる道が完成するわけだ。

 物理学では、この現象を「パーコレーション(浸透)」と呼ぶらしい。見方によっては、除々に岩に浸透していく水のようにも見える。で、この実験の場合、電気は流れるか、流れないか、ふたつにひとつ。金属片の数の増大によって、少しずつ電気が流れるわけではない。ある数に達したとき、いきなり電気が流れるのだ。つまり、電気が流れるか、流れないか、ギリギリの状態というのは、「臨界」に達しているといえる。

 なんで、こんなFlashを作ったかというと、小島寛之氏の「算数の発想」(NHKブックス)を読んだから。小島氏によると、100×100のマス目を作り、ランダムに金属片を撒いたとき、左右のマスがともに金属片であるようなマスをつないでいった図形をクラスターと呼ぶ。そして、ある特定の確率(p)に達したとき(この場合、0.5928)、両極をつなぐ、パーコレーションを引き起こすクラスターが生じるという。このパーコレーション・クラスターは、さまざまな小クラスターから構成されるが、全体に相似した、フラクタル図形になっているという。

 まぁ、私の作ったFlashは、100×100のマス目(10000個の金属片)では、Flashのスピードが遅すぎるので、56×52のマス目に縮小してあるし、電気が流れるクラスターの判定も、自己流でだいぶいい加減だ^^;でも、なんとなく雰囲気は伝わると思う。「フラクタル」と言われれば、「なるほど…」とも思うが、よくわからない。でも、イナズマとゆーか、太陽のフレアみたいに見えなくもなく、木の根っこのように自然界にはよくある形のようにも見える。私は、こーいったフラクタル図形を見たり、コンピュータを使って描いたりするのが大好きなのだ^^;

 ところで、本書は、なぜ「数学の発想」ではなく、「算数の発想」なのだろうか。算数と数学の違いは、個別性と普遍性だ。「つるとカメが合わせて10匹いて、足の本数を合わせると38本だった。つるとカメは、それぞれ何匹か」という算数の問題は、数学になると「以下の連立方程式を解け。x+y=10、2x+4y=38」となる。算数が個別的な問題なのに対し、数学では、方程式を立て、それを決まった手続きで解いていく。問題を普遍化することで数学は威力を増す。しかし、著者は「むしろ、算数の発想にこそ、さまざまな科学の思考法の原点が根づいている」と説く。

 「算数の発想」の副題に「人間関係から宇宙の謎まで」とあるように、上記の「パーコレーション」の話は、この本のほんの一部にすぎない。他にも興味深い、関心をそそられる話ばかり。

≪目次≫
序章:個別的思考とフィクション感覚
    ――「算数の発想」とは何か
第1章:「旅人算」から宇宙論へ
    ――ものごとを相対的に見る発想
第2章:「ガウス算」から環境問題へ
    ――グラフをさかさまに見る発想
第3章:「相似図形」からフラクタルへ
    ――無限をイメージするための発想
第4章:「仕事算」から経済成長理論へ
    ――景気低迷を読みとく思考
第5章:「数え上げ」から不可逆現象へ
    ――格差社会を読みとく思考
第6章:「集合算」から協力ゲームへ
    ――政治力学を読みとく思考

 ね、どの章も興味を惹かれるでしょ。どれもこれも紹介したいけれど、私なんかが紹介するよりも、本書を読んでみるのがいちばん^^;とくに「数学なんて、世の中に出たら何の役にも立たない」と思っている方は、ぜひ一読あれ。

算数の発想―人間関係から宇宙の謎まで (NHKブックス)
著者/小島寛之
定価/920円+税
発行/日本放送出版協会
ISBN4-14-091060-7


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